かもめの水兵さん
長い間、この歌は「…白い帽子、白いシャツ、白い靴…」と続くのだと思っていた。かもめは上から下まで真っ白なんだなあ、と一人納得していたのである。
ところが、朝の散歩道の川に時々やってくるかもめを見て、足が黒いのを見て愕然とした。今までとんでもない誤解をしていたのではないか。これはどういうことかと考えると、次のような可能性が思いついた。
(1) 川で見たのは実はかもめではなく、足の黒い別の鳥である。
(2) 実際のかもめと無関係に、ある種理想的なかもめの歌である。
(3) 歌詞を覚え間違えていて、実は「…黒い靴…」だった。
そこで念のためにウェブでかもめの画像を探すと、(1) の可能性が出てきた。どうも顔が違う。足が真っ黒なかもめはいない。しかし、足まで真っ白なかもめというのもなさそうなのだ。大体、背中や羽は白くないし。(2) の可能性も否定できない。
先日、ラジオで、連日、「かもめの水兵さん」を違った歌手で放送したことがあった。あらためて聞いてみると、やはり「…白い靴…」と歌っているように聞こえる。すると、やはり (2) なのだろうか。
もっと早くウェブで「歌詞」を検索するということに思いあたればよかったのだろうが、真相は、この段階で明らかになった。正解は、(3) に近いが、
(4) 歌詞を聞き違えていて、実は「…白い服…」だった。
その上で翌日の放送を聞いてみると、確かに「…白い服…」と聞こえた。要するに空耳だったのである。
なぜ、「白い服」という可能性を無意識に排除していたかというと、その前の「白いシャツ」のせいである。すでに服の一部に言及しているのだから、その次は服の他の部分か服以外のものであるべきだろう、と思っていたのだ。
これは意味論の問題である。だから「白いズボン」ならば納得だが、かもめがズボンを穿いているとも思えないので、服の他の部分は省略して一気に「白い靴」に言及したと思ったのだろう。
「白い帽子」と「白いシャツ」からなるかもめの衣裳を「白い服」と総括しているのだと考えることもできるが、帽子とシャツだけで「服」というのはあんまりだという気がする。きちんと上下を揃えて、
白い帽子、白いシャツ、白いズボン
白い服着てすましてる
のような歌詞の展開ならば納得がいくのである。音韻論的にはちょっと不揃いだが、歌えなくもない。
しかし、例の足の黒い鳥はどうもサギらしい。騙されたような気分。
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