« 2013年5月31日 | トップページ | 2013年7月31日 »

June 30, 2013

國寶ローズ

37年前に初めてアメリカに留学したとき、英語や勉強のこともさることながら、食べ物が不安だった。アメリカに、日本のように安くておいしく食べられる食堂があるとは期待できなかった。

やがて、学生寮の食堂で、寮生でなくても学期単位のミールチケットの契約で三食安く食べられることがわかり、「安く」の方は解決した。問題は「おいしく」である。寮食は好きなだけ食べられるが、なかなかお代わりをしたくなるようなものに出会わない。「スキヤキ」と称して、醤油味の野菜と牛肉の煮物が出ることもあったが、特に感激することはなかった。

さらに問題は、学期と学期の間は閉寮となるので、食堂も閉鎖されることである。しかたなく、それまで料理などしたことがなかったが、休みの間は自炊をすることにした。確か初めて作った「料理」は、近くの東洋人のやっている店からうどんの乾麺を買ってきてゆでただけだったような気がする。それに何を加えて一食として完成させたのかは、記憶にない。

慣れてくるにしたがって、自分で作った方がずっと「安く」「おいしく」できることがわかり、寮食には行かなくなった。自炊となると、大事なのは米だが、幸い上記の店ではカリフォルニア米を扱っていたので、そこから調達することにした。それが「國寶ローズ」との出会いである。

この米は、日本産の米と比べても十分においしかった。炊飯器でご飯が炊ける間に簡単なおかずを作ればよいので、勉強の合い間の気晴らしとしても、よい生活のリズムができるようになった。

こんなことを30年以上振りに思い出したのは、先日、アメリカに留学していて、一時帰国している元院生と話していて、彼女も「國寶ローズ」を食べているということを聞いたからである。今でも売られていて、留学生においしく食べられているということに感慨の深いものがあった。

「國寶ローズ」は国府田農場産と袋に書いてあったが、調べてみると、この農場を作った国府田敬三郎という人は、日本生まれで、福島出身だと言う。父が戊辰戦争に敗れ、本人も太平洋戦争のころは強制収容所に入れられたりと、大変な生涯を送ってきているが、戦後に取り戻した土地で、「國寶ローズ」の大量生産に成功したという。

この米は、あたかも、2度にわたる負け戦を挽回してできている。それが、戦後何十年とたっても、日本人留学生の心の糧となっていることを思うと、国府田氏には心から感謝したい気持になる。

|

« 2013年5月31日 | トップページ | 2013年7月31日 »