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February 28, 2015

はしりと旬

今年は、2月26日に「いかなご(玉筋魚)」漁が解禁となった。神戸近辺では、2月末から3月にかけて、2cmくらいのいかなごの幼魚(新子)を各家庭で佃煮のように煮た「釘煮」を作るのが年中行事となっている。スーパーなどでは、完成品も売っているのだが、材料と調味料(それに知り合いに配るためのプラスチック容器)をセットで売っていることも多く、各々の家で独特の味の釘煮を自家製するのが盛んである。

和食、すなわち日本の料理は、季節感を大事にするものが多い。そのため、温室栽培や養殖によって一年中食べられる食材を使った料理よりは、一年の一定の期間しか食べられない材料を生かした一品を珍重する気風がある。

食べ物などの初物を「はしり」と言う。漢字では「走り」と書くから、一足先に走っているということだろう。初物は、珍しさが何より大事であるから、味の方は、「旬(しゅん)」の頃の、量的にも多く獲れ、味もよい時期のものには劣ることもあるが、それでも、季節の訪れとともに真っ先に食べたということに満足を覚えるのである。

いかなごは、成長すると10cm以上にもなるらしいが、そんな大きな釘煮は見たことがないし、そもそも、成魚の釘煮なるものがおいしいのかどうかもわからない。いかなごの釘煮の場合は、旬を待つよりは、はしりのときを最上のときとして食べるものなのだろう。

ところで、大学でも、新しく学部や学科を作ると、一種の「初物」として珍重されるのか、その年は志願者がどっと増えることがある。十分に時間をかけて用意しているとは言え、一年目には、設備・教員が全部揃っているとは限らない場合もあるのに、新しいものには関心がもたれるのだろう。

しかし、新学部・学科の真価が問われるのは2年目以降である。特に、1年生から4年生まで全学年の学生が揃って、いわゆる「完成年度」を迎えるときには、まさに「旬」を迎えた学部・学科として、中身も完成されていなくてはならない。当然、当初の設立の計画通りに物事が進行しているかが厳しくチェックされる。

新学部・学科を作り育てるには時間がかかる。旬を迎えた状態を味わってもらいたい。いかなごの釘煮とは違って、はしりのころが一番おいしかった、というのでは困るのである。

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