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April 30, 2015

L君への手紙

L君、

今日は、君に謝らなくてはならないことがあってこの手紙を書いています。本当に迂闊なことに、今までの数十年間にわたって、僕がどれほど君の世話になっていたことか、ついこの間まで気づいていませんでした。

君は、普段から控えめなので、不平も言わず、じっと耐えていてくれたんですね。そんな君に気づかず、君の好意に甘えてきた自分を恥じるばかりです。

君の様子が少し違うことに気づいてから初めて、僕が君をどのように使ってきたかを意識するようになりました。君は力強いから、重い物を持ったり、力のいる仕事のときに頼っていたことは、もちろん意識していましたが、それ以外にも、今から思えば、別に君でなくても、ということにも君を使ってしまっていたんですね。

それが、それほど力のいる仕事でなくても、ちょっとひねらなくてはいけないとか、微妙な細かい動きを必要とするとかの理由で、ついつい、君に頼ってしまっていました。特に考えることなく、それが僕にとって便利で、何も気にしなくてよかったから。

でも、君にとっては、もう限界だったのかもしれませんね。君が痛みを訴え、それで、あわてて君に頼ることを考え直したのは、遅きに失したのかもしれません。考えたら、別に君でなくても、R君でもそこそこできはするし、何が何でも君に頼る必要はなかったかもしれない。もちろん、君にやってもらえば、僕にとっては何のストレスもなく、スムーズに事が運ぶけれど、今から思えば、そこまで君に犠牲になってもらう必要はなかった。

文句が出なければ、不平が聞こえなければ、すべてがうまくいっているのだ、と傲慢にも思っていました。自分から気をつけて、心の中に潜んでいて、声にならない声にもっと耳を傾けなければいけなかったんですね。

この数日、意識してR君を使うようにしてみて、それほど問題はないことがわかりました。今でも、特に慎重を要することには君の力を借りていますが、これからは、今までのように過重な負担をかけることはないと思います。

L君、今までの長い間、ありがとう。これからは、もっと休んでもらえるようにします。君だけでなく、R君と合わせて、両手をバランスよく使うようにしたいと思います。

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