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February 29, 2016

オオカミ少年の末路

2014年7月にその後の消息がわかったオオカミ少年ケンですが、疑惑のオオカミ「目撃談」の出版以来、激しいバッシングに合って、一時姿をくらませていました。

しかし、転んでもただでは起きないケンは、もともともっていた文才を生かして、ひそかに再起を狙っていました。10歳を越えてからおぼえたはずの日本語にますます磨きをかけ、ノンフィクションでなく、小説を書くようになったのです。

あれだけ激しかったバッシングも、1年半もたつと、多くの人の記憶にはとどまっておらず、「あのオオカミ少年の書いた」などという宣伝文句は使わずに、あえて、オオカミを連想させない、「猫吉(ねこよし)」というペンネームで、「彼岸花(ひがんばな)」という小説をひそかに出版しました。この小説は、純粋にその文学的価値によって多くの人に好まれ、その年のベストセラーになってしまいました。受賞こそできませんでしたが、某AKG賞候補にもなりました。

何もかもが順調に行って、新しい人生を手に入れたケンでしたが、ある日突然、担当編集者に今の出版社を去ると打ち明けられました。彼女は多くを語りませんでしたが、噂では、出版社の社長とかねてから意見が合わないことがあったようです。

自分をここまで育ててくれた恩を感じる、猫吉ことケンは、その編集者についていき、今後は、彼女が新しく設立する出版社から本を出してもらおうという意向を示しますが、安定した大手の出版社を敵に回したら、どこからも本を出してもらえなくなると、友人たちに説得され、結局今までの出版社に留ることにしました。

こうして、すでに有名人となっていたケンの「独立騒動」はあえなくつぶれてしまい、引き続き、元の出版社で、新しく担当となった編集者と本を出すことになるのですが、騒動の記憶は人々から簡単には消えず、ケンにとっても汚点となってしまいました。ついには、数年前の目撃談の捏造疑惑までほじくり返す人も出てきて、彼の書くものを色眼鏡で見る人もふえてきました。

すっかり人間社会に嫌気をさしたケンは、再び、自分の原点である、あの森に帰ることにしました。ケンが今はどうしているのか、その後を知る人はいません。(終わり)

* 本稿は全くのフィクションであり、実在する人物との類似があったとしてもそれは偶然にすぎません。

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