ロンドン滞在記(センター所長 安達圭一郎)
6月9日~15日の約1週間、私の専門である対人関係療法(IPT)の国際学術会議(ロンドン)に参加してきました。日本からは、わが国第一人者で国際学会の理事でもある水島広子博士を始め、私も含めて総勢6名の参加となりました。
6月のロンドンは、10:00pm頃まで薄ら明るい、緯度の高い地域ならではのサマータイム真っ最中です。日中の平均気温も20°Cと、薄い上着一枚で丁度よかったです。素晴らしい街並みと温かい人々、ついでに天候にも恵まれ、とても快適な滞在となりました。
本題に入る前に、素朴な驚きのエピソードを一つ。さすがに10:30pmを過ぎる頃には辺りは暗くなってきます。ところが、赤い体操帽(日本の赤白帽そのものです)をかぶった20名くらいの小学生が、リュックを背に列をなして歩いているのです。どう見ても、社会科見学か修学旅行です。2~3名の大人が付き添ってはいましたが、こんな遅い時間に小学生が行進だなんて、日本ではとても考えられません。おおらかというか、治安がとても良いというか、文化の違いをまざまざと見せつけられました。因みに、後ろをついていくと、目的地は私が滞在していたホテルでした。そこには、青や緑の帽子をかぶった小学生達がワイワイガヤガヤ…。
前置きはさておいて…。IPTは誕生して40年を迎えます。誕生の時期は認知療法とほぼ同じですが、学会組織としてはまだ黎明期です。そのおかげで、今を時めくような世界的な学者や治療者とざっくばらんと話ができる、そんな、何物にもかえがたいメリットがこの学会にはあります。会長自らが、すべての会員を仲間として温かく見守ってくれているのが身に浸みてわかるのです。英語のへたな私にも、多くの方が、笑顔を絶やさず粘り強く私との会話を楽しもうとしてくれました。また、学術的な質問にも必死に耳を傾けてくれました。海外にいるアウェイ感は、日に日に薄らいでいきました。「対人関係」を看板にする心理療法の専門家らしい、とてもすばらしい姿勢です。
もちろん、学問的にも大きな収穫がありました。私の語学力では十分に理解できない部分は、英語にご堪能な水島先生に解説していただいたので、たいして問題にはなりませんでした。その中で印象づけられたのは、技法が深化していること、そしてその有効性をきちんと確認しようとする姿勢に貫かれている点です。うつ病に対する有効性が科学的に証明されて以降、様々な精神科疾患でもその効果が分かってくると同時に、世界各国で実践する者が増えていきました。そして、そのことを、会場参加者から直に感じることができましたし、一貫して、その有効性の検証が合言葉となっているのです。
私も、IPTを専門とする者の一人として、諸外国の仲間たちに負けないよう日々研鑽していく所存です。
センタースタッフの皆様、個々お忙しい中、所長不在のセンターをしっかり守っていただきありがとうございました。
有名な2階建てバスとロンドンの美しい街並み
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